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研究概要・用語解説

[01] PET(ペット)<ボジトロンエミッショントモグラフィー>とは

PETとは,Positron Emission Tomography(ボジトロンエミッショントモグラフィー)の略でごく微量の放射線を出す原子をグルコース等の体内にある分子に付けて、そこから出る放射線を測定して体内のどこにあるかを見ることができる方法です。最近、話題になっているPETでのがん検診はこの応用です。

PETで見ることができる放射線を出す原子は炭素,酸素,窒素,フッ素等の体内にある普通の原子です。PETとよく似たガンマカメラというものがありますが、これは主に金属等の特殊な原子を見ています。PETのこの特性により風邪薬や制がん剤等の薬に放射線を出す原子を付けることができ,薬が体内のどこにあるのか見ることができます。これを応用すると最初にごく微量の放射線を出す原子をつけた薬(微量なので薬の効果も副作用も無い)を飲んでPETで見ると薬が病気の部分に到達しているかを見ることができるようになり,その人にとって薬が効くかどうかを判断することができるようになります。

また、新薬の開発では新薬が病変部に届くかどうか,別のところに集まっていないか(副作用の可能性)を生きている状態で見ることができ,新薬開発の効率化もできると期待されています。

[02] 分子プローブとは

生体機能の解明・探索を可能とする、あるいは特定の分子を認識することができる分子の総称です。その分子の局在や動態を目で見る(可視化する)ために蛍光や放射線などを発生するユニットを分子内に組み込み、標的となる分子、組織、細胞、さらにはタンパク質などを観察することが出来ます。例えば、可視化するユニットが蛍光分子である場合は、「蛍光プローブ」γ線を放出する 11C や 18F 等を組み込んだ分子を「PET プローブ」と呼びます。

[03] PETトレーサーとは

分子プローブの中でも、特にγ線を放出する 11C や 18F 等を組み込んだ分子を指します。病院で用いられる FDG はこの代表格です。本研究所では新しい「PETプローブ」を生み出し、生体の機能の解明や、疾患診断、創薬研究のための基盤研究を行っています。

[04] in vivo

生体をそのまま使う実験で、生体内で起こる現象に反映するため自然に近い実験結果が得られます。ただし、生体内にある色々な物質と相互に反応したり、生理的な条件で結果が左右したりします。

[05] in vitro

生体にある細胞や物質などを生体外で、主に試験管内などで行う実験を言います。細胞や物質の特性を純粋に観察する上で重要であり、実験結果を踏まえて in vivo 実験にステップアップします。

[06] ポジトロン

ポジトロンは、陽電子と呼ばれる放射線の一種です。「サイクロトロン」という機械でつくることができます。普通の原子から放射線を出す原子に変身させるのが、「サイクロトロン」という機械です。

[07] トランスレーショナル研究

薬剤候補となる分子プローブの安全性と有効性が動物実験で確認された後、ヒトでの臨床研究へとステップアップします。ヒトに投与するには、国が定める製造・品質管理規則(GMPと呼ばれます)に準拠してPETプローブを生産する必要があります。CMISでは、この基準を満たすGMP合成エリアを施設内に有しています。このエリアで合成されたPETプローブは、臨床研究を行う医療機関へ安全かつ安定に供給され、動物での基礎研究の成果をヒトでの臨床研究へと橋渡しします。

[08] GMP(Good Manufacturing Practice)

GMPとは医薬品や医療用具の製造管理および品質管理に関する基準です。

安心して使用することのできる品質の良い医薬品を供給するために、医薬品の製造(原料の受け入れから最終製品の出荷に至るまでの)工程に関して、製造所の構造設備や製造衛生管理ならびに品質管理の全般にわたって定められた基準のことです。

研究施設においても、 GMP基準に準拠した設備を備えており、医薬品開発に関する試験やヒトへのトランスレーショナルリサーチに用いるPETプローブを供給することができます。