分子イメージング研究の国家的推進、活性化を目指して、文部科学省は平成17年7月に「分子イメージング研究プログラム」を発足させ、創薬候補物質探索拠点として理化学研究所、PET疾患診断研究拠点として放射線医学総合研究所(放医研)がそれぞれ選出されました。(詳しくはこちらをご参照ください)
第I期(平成17年度~平成21年度)は、本研究領域のオールジャパン研究体制作りに向け本プログラムを推進し、 理化学研究所は、分子イメージング技術に関する要素技術や試験設備などの整備を行い、基盤技術の開発(高効率合成技術、高速標識科学反応技術、統合的機能評価法、薬物動態解析技術等)ならびに成果の提供を行ってまいりました。
平成22年度より第II期として、文部科学省は第I期プログラムで開発された要素技術を活用し臨床応用に結び付けることを目的として「分子イメージング研究戦略推進プログラム」を開始しました。本プログラムでは、がん、認知症診断治療に重点化し、公募で採択された複数の機関と連携して共同研究を行います。
理研では創薬候補物質の探索に資する要素技術の開発* および実用化へ向け、一日も早い成果創出を目指します。
* 創薬候補物質の探索に資する要素技術の開発
分子イメージング技術を高度化・活用することで、従来動物レベルで行われてきた生物学・医学研究をヒトレベルへと展開させ、全身の多様な生体機能分子の低侵襲的な追跡・解析を可能とし、医薬品開発の効率化ならびに、糖尿病等生活習慣病や慢性疲労症候群等の疾患メカニズムの解明、新たな医療技術の開発を目指す。
○抗体医薬等、抗がん剤の適合性チェックのためのイメージング技術の確立
○がん幹細胞のイメージング研究(特異的マーカー等を標的とする化合物をプローブ化)
○神経炎症に起因する認知症の病因解明と予防効果・治療効果に関する評価技術の開発
○アミロイドイメージング技術を用いたアミロイド減少薬の開発
本プログラムではオールジャパン体制の要として、下記の取り組みを実施します。
従来の創薬プロセスでは、動物を用いて開発候補化合物をスクリーニングしていましたが、動物とヒトでは代謝酵素や薬物トランスポーターなどのはたらきが異なり、必ずしもヒトで最適な候補化合物を選別することができず、数多くの開発が途中で中止されました(治験に上がったものの10%以下の成功率)。今後は、開発の早期にマイクロドーズ臨床試験*を実施することによって、ヒトで安全に候補化合物を絞り込み、さらに、イメージングバイオマーカーを活用した小動物・霊長類、ヒト共通の評価システムを利用することで、臨床投与量の推定や、開発化合物の有効性・安全性の確認を効率よく実施し、治験の成功率を30%~50%に上げることを目標にしています。