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分子プローブ動態応用チーム[Molecular Probe Dynamics Laboratory] チームリーダー:渡辺 恭良
概略
研究内容
研究業績
研究スタッフ

研究内容

 当研究チームでは、核内受容体認識プローブや核酸プローブによる遺伝子発現イメージングに関するPET研究を行い、遺伝子疾患に対する創薬の評価システムを構築するほか、新しい概念の分子イメージングを目指します。また、創薬を目指した薬物動態・薬物活性解析を行うとともに、薬剤到達システム(Drug Delivery System;DDS)の開発研究も並行して行っています。さらに、PETをはじめとする分子イメージング機器の高感度化・高分解能化と様々な次世代分子イメージング法の開発を行い、これまで観察することができなかった生体内での分子や細胞の挙動を捉えることに挑戦しています。



【高分子の挙動を探る】
68Gaは、68Ge-68Gaジェネレータによって容易に取り出し可能なことから、高価なサイクロトロンを必要とせずに分子イメージングを行えます。特に、Ga3+イオンと親和性の高いキレーターに結合させることにより、核酸や高分子化合物である抗体などのたんぱく質を用いたイメージングを可能とします。

【薬物動態研究】
分子イメージング技術を薬物動態研究に応用することで、薬物が全身の各臓器へどのように移行し、どの経路で排出されるかを、同じ個体で、かつ非侵襲的に解明することができます。更に、薬物トランスポーターが関わる遺伝子多型や薬物相互作用の影響についても、分子イメージング技術を応用し、詳細な速度論的な評価ができると考えられ、今後、創薬研究にはかかせないツールになっていくと考えられます。

【病因・病態研究】
アルツハイマー病はβアミロイドペプチドという不溶性の繊維が脳内に蓄積しているために認知機能障害が起こると考えられています。これまでアルツハイマー病の最終診断は死後脳からβアミロイドペプチドの蓄積を確認していましたが、PIBを用いたPETイメージングにより、生前診断が可能となりました。我々の研究所では、大阪市立大学との共同研究として、2008年末までに129例のPIBを用いたPETイメージングを行いました。その結果、アルツハイマー病と診断された患者のうち約80%においてPIBの集積が認められました。また、2年間の追跡研究の結果、当初軽度認知障害と診断されその後認知症へ移行した患者群の3分の2にPIBの集積が認められました。現在、アルツハイマー病の根治治療として、βアミロイドを溶かす抗アミロイド治療の研究が進んでおり、早期診断・治癒適応の判断にはPIBを用いたPETイメージングが重要な位置を占めています。当研究チームはPETトレーサーの新規合成法となる基盤化学反応の開発を中心として、創薬候補物質の探索に必要な分子科学的方法論の確立を目指しています。具体的には、高品位オリジナルPETトレーサーの創出のための短寿命かつ超微量ポジトロン放射核種に対応した新化学反応の開発、生物現象や重篤な疾患をターゲットにした高機能分子プローブの設計と合成を行っています。本研究で誕生したPETトレーサー化の技術は、創薬研究の観点から、とくに薬効および病態評価のための標的マーカーの創製と薬物の体内動態の最適化および標的分子の体内分布解析のために活用されます。